「何をどこまで制限すればいいのか?」という不安があると思います。
実は、児童対象性暴力等だけでなく、その前段階とされる「不適切な行為」の防止を如何に周知徹底させるかが事業者としての肝となります。
本記事では、「不適切な行為」について解説します。
”児童対象性暴力等”とは
児童対象性暴力等は、児童生徒性暴力等(教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律第2条第3項)及び高等専門学校の第1学年から第3 学年又は専修学校(高等課程)に在学する者に対して行われる児童生徒性暴力 等に相当する行為です(こども性暴力防止法第2条第2項)。
具体的には、
例えば、次の行為が該当します。
・ 児童等との性交等
・ わいせつな行為
・ 児童買春やポルノに関わる行為、性的姿態の撮影
・ 衣服の上からや直接の身体接触、盗撮など
・ 性的羞恥心を害する言動であって、児童等の心身に有害な影響を与えるもの
などが挙げられます。
刑法の不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪等)や不同意性交等罪(旧強制性交等罪)、いわゆる青少年健全育成条例により禁止されるわいせつ行為などの構成要件に該当する行為、児童生徒等に対する悪質なセクシュアル・ハラスメント(児童生徒等を不快にさせる性的な言動)などが該当します。
”不適切な行為”とは
「不適切な行為」は、それ自体は児童対象性暴力等には該当しないが、業務上必ずしも必要な行為とまでは言えないものであって、当該行為が継続・発展することにより児童対象性暴力等につながり得る行為をいいます。
「不適切な行為」が行われる中で、公私の区別が不明確になったり、児童等との適切な距離感が失われたりすることにより、児童対象性暴力等に至るリスクを念頭に置いて、「不適切な行為」を改め、児童対象性暴力等に至ってしまうことを未然に防止することが重要です。
具体例として、
・SNSでの私的なやり取り: 業務上の連絡範囲を超え、個人的なLINEやDMで秘密を共有する、私的な端末で、こどもの写真を業務外の目的で撮影する。
・不必要な密室化: 外から中が見えない場所で1対1の指導を継続的に行う。
・過度な特別扱い: 特定のこどもにだけ内緒でプレゼントを渡す、個人的に車で送迎する、特定のこどもばかり理由なく担当しようとする。
・境界線を越える接触: 指導上の必要がない範囲での身体接触。
などが挙げられます。
ただし、
「不適切な行為」は、対象事業者、事業内容、対象となる児童等の発達段階や特性、現場の状況等によって、不適切であるか否かが変わり得るものであり、上記の行為に該当することで一律に不適切であると判断されるものではないことに留意が必要であることが、こども家庭庁のQ&Aにも書かれています。
抱っこを定義をするにしても、未就学児と中・高生を同じ土俵で比べてはいけません。
これまで従事者がコミュニケーションの一環として行っていたこどもとの直接的なSNS交換は不適切な行為に該当する懸念があります。
これらは「グルーミング(手なずけ)」と呼ばれ、性被害の温床となることが指摘されています。
大抵の従事者は、こどもとのコミュニケーションだけのためで、邪な意識はないと思います。
ですが、
これからの事業者は、従事者としっかりコミュニケーションを図り、現場が過度に萎縮することがないよう留意して、事業者ごとに「不適切な行為」の範囲を決定することが必要です。
事業内容によって、「不適切な行為」の範囲や程度も変わってきますし、「不適切な行為」と思っていたものでも、実は犯罪行為であることもあり、児童対象性暴力等に該当してしまう場合もあります。
弁護士や行政書士などの専門家を交えて検討することをお勧め致します。
まとめ
「不適切な行為」を放置することは、こどもを危険にさらすだけでなく、事業者が築き上げた信頼や「認定」を一瞬で失うリスクを孕んでいます。
日本版DBS制度において、事業者は単に「犯歴がないこと」を確認するだけでは足りません。
日々の運営の中で、性暴力に繋がりかねない「不適切な行為」を未然に防ぐ体制(安全確保措置)を整えることが求められます。


